心雑音を指摘されたら
大人になって心雑音が指摘された場合、弁膜症を発症している可能性があります。弁膜症とは、心臓にある4つの弁のいずれかに異常が起こって機能不全を起こしている状態で、軽度のものから重度のものまで様々な病状があります。
弁膜症は心臓超音波検査を行うことですぐに確認できますので、健康診断で心雑音を指摘された場合は、ぜひ当院までご相談ください。
心雑音とは
心雑音とは心臓の音に混じった雑音のことで、血液の移動の時に発生します。狭い隙間を血液が速い速度で通過すると振動して音が出ます。
血流が増すと心雑音が出やすくなります。また、心臓に異常がなくても、甲状腺機能の亢進では心臓の血液速度が上がりますので音が聞こえることがあり、貧血で薄くなった血を補うために血流が増すことでも音が出ることがあります。また、自律神経の興奮で心臓が活発化しているときなどでも音がします。
その他では、動脈硬化で弁が狭くなっている時などに音がします。また、心臓の出口の筋肉が分厚くなっている状態でも音がします。
弁が閉じずに血液が逆流を起こした際にも音がします。心臓は、部屋から部屋に1心拍毎に60mlの血液が移動し、後ろの弁が閉じることで逆流を防いでいますが、弁が完全に閉じずに隙間があると、血液が逆流を起こし、音を発生します。
心雑音の原因として考えられる病気
弁膜症
心臓には4つの弁があり、この弁が必要に応じて開閉することで効率よく全身へ血液を送り出していますが、その弁がうまく開閉しなくなる病気を弁膜症と言います。
弁膜症として多いのは、大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症・閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症、肺動脈弁閉鎖不全症になります。特に、高齢の患者様の心雑音の原因として多くみられる症状が大動脈弁狭窄症です。大動脈弁狭窄症は、加齢や動脈硬化を発症すると進行することが多い弁膜症で、重篤化すると失神や突然死の原因にもなります。よって、大動脈弁狭窄症と診断された際には、治療方針について慎重に検討する必要があります。
また、高血圧であったり、心房細動などの頻脈性不整脈をもつ患者様や、心臓の機能が低下している患者様などでは、僧帽弁閉鎖不全症や三尖弁閉鎖不全症といった、血液が逆流してしまう弁膜症が多くみられます。
いずれの場合も、心エコー検査によって弁の開き具合や血流の向きなどを確認することで、病気の有無を評価することが可能です。
先天性心疾患
先天性心疾患とは、生まれつき心臓の構造に異常がある先天性の疾患です。先天性心疾患は数多くの種類に分類されますが、その中でも多いのは心房中隔欠損症や心室中隔欠損症という、心臓の中に小さな穴が開いている状態の疾患です。心房中隔欠損症は先天性心疾患の中でも、大人になってから最も多く見つかる疾患です。心室中隔欠損症は先天性心疾患の中では最も多くみられる疾患ですが、自然治癒することも多いです。
いずれも心エコー検査によって、本来は存在しない穴の存在や、血流の向きなどを見て診断を行うことが可能です。
お子様の定期検査等で心雑音を指摘された場合、多くは無害性である場合が多いですが、稀に先天性心疾患が原因の場合もありますので、心雑音が確認された場合は必ず心エコー精査を行うことが大切です。
貧血や甲状腺機能亢進症など心臓以外の原因
心臓に異常がないにも関わらず心雑音が聞こえる原因として、貧血や甲状腺機能亢進症、発熱、運動、妊娠などが考えられます。
貧血や発熱時、運動時などは、心臓の拍動が正常時よりも強くなるため、大動脈弁や肺動脈弁の開きが悪くなり、弁膜症の時と似たような心雑音が聞こえることがあります。
心臓に異常がない場合は、採血を行なって貧血や甲状腺ホルモンの状態を確認することもあります。
心雑音を指摘されても問題ないこともある?
健診で心雑音を指摘されたとしても、全ての場合に問題があるわけではありません。例えば、体が細かったり血圧が高めの場合は、心音の強勢という通常の心音よりも強く聞こえる場合もあります。
また、通常の心音に余計な音が混じる過剰心音という状態もあり、これらも広義では心雑音と表現されることが多いです。いずれにしても、心音に異常が確認された場合は、心臓が異常を起こしている可能性があるため、定期的に心音を確認することは重要です。